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一番嬉しいのは、患者さんやスタッフと、時間を気にせずゆっくり付き合えること
○病院 ”San Benito Menni”
精神科の病院で、女性病棟、男性病棟共に40床あり、現在入院している患者の数は、女性が31名。男性は、30名前後。デイケアにも5〜6名が訪れる。支払いが困難な患者に関しては、社会福祉士が間に入り、本人が負担できる割合を査定するが、通常の入院費は、一日50BS(US$6-7程度)。 病院の本部はスペインにあり、運営母体は教会。25カ国に施設や病院等を持つ。ボリビアでは、入院施設のある精神科の病院は、ここサンタクルス市内の“San Benito Menni”と“Centro de salud mental”の2つ、ラパスに1つ、スクレには大きな国立の病院が1つある。 「日本と比べると数は、すごく少ないと思います。」ボリビア第3の都市のコチャバンバには病院がない為に、離れたスクレの病院にまで行ったり、トリニダなどからサンタクルスへ来院する人もいるという。 施設に入ると、明るい受付、そこを抜けると、緑あふれる庭が広がる。平屋の建物が入院病棟。患者さんが作った食べ物や手芸品を販売するカフェテリアもある。施設の入り口毎に施錠してある事以外は病院であることを感じない開放的な作りになっている。奥へ進むと、畑や豚小屋、サッカーのできる広場もある。 ○病院でのアクティビティと患者さん 病院では、入院患者の状態に応じて、治療の一環として日常労働(生活療法)にも参加する。毎日、朝の集いで担当を決めて洗濯、料理、清掃、浴室掃除、畑(庭)作業などにわかれて作業をしている。 「日本では、早く効率的に終わらせる為に看護師や専門の清掃業者がやってしまうことが多いのですが、ここでは患者さん達と清掃スタッフの参加でうまく機能していると思います。」患者達の栽培した野菜や、給食の残飯を食べ成長した豚は、調理されて食卓にあがることもある。 毎日様々なアクティビティが行われ、同じくこの病院で作業療法士として活動する協力隊員の藤原愛さんの手工芸や絵のクラス、柔道隊員の井上泰仁さんが訪れて、週一回の柔道教室、サッカーの試合など様々な活動が行われている。
アクティビティに参加している患者さん達は、皆穏やかな様子だったが、 ○ボリビアの全体の福祉について 「保健衛生の分野にも優先順位があって、一番多くの人が恩恵を受けられる生活の基本的な部分が優先されます。ボリビアでは、まだきれいな水が確保できない所があるので、そうなるとまず、安全な水の確保、母子保健衛生、その次に小児、そのあと高齢者や障害者などの福祉へ目が向けられるようになってきたと思います。 戦後の社会復興の中で、母子保健などが優先されたかつての日本の状況もそうだと思います。そこから社会基盤の発展に伴い、公衆衛生が整備され、社会構造が変化していく中で、少子化、高齢化が進んできました。そして今、高齢者や障害者向けの福祉が充実しはじめてきています。ユニバーサルデザインとか、バリアフリーというように。そういう流れがあると思います。 ですから(ボリビアで)障害者の人たちに目が向けられるのはもうちょっと先かと思います。他の国のNGO等も力を入れているとは思いますが、社会全体で見るとまだまだこれからの印象を受けます。」 最初、病院での患者さんへの対応が、日本と比べて丁寧でないことに驚いた。 ○現在の森谷さんの主な活動
「女性病棟で、看護師のスタッフと一緒に動いて、患者さんのケアをしたり、レクリエーションに患者さんと参加したりしています。少しづつですが、長期的に入院している患者さんの物品の整理もしています。これまではかなり混乱していて、人の歯ブラシを平気で使ったりということがありました。」 看護師は、男性病棟を含めて全員で13名前後。その内、男性の看護師は、1名。3交替勤務(7:00-14:00,14:00-21:00,21:00-7:00)で、各勤務帯に1名の看護師の配置となっており、1名で40名の患者を看ることになる。取材中も警察に付き添われた緊急の入院患者への対応や、電話の応対など大変慌しい様子。 「臨床心理の学生や看護学生が実習にきていますが、基本的には、直接患者さんのケアに携わるというのはまずはないです。だから、1人の患者さんの調子が悪くて看護師がつきっきりで対応をしないといけない場合、他の患者さんのケアがどうしても行き届かなくなってしまいます。」 勤務は、7時間労働。「日によっては超過することもあります。7時間はきっちりして、この平日5日間勤務です。他の看護師も平日勤務と週末勤務、夜勤と分かれているので予定が組みやすく、体のリズムもとりやすいです。」日本の勤務は、不規則だったが、ここではリズムのある勤務体制である。 現在の活動で、 「一番嬉しいのは、患者さんやスタッフと、時間を気にせずゆっくり付き合えるということです。日本にいるときは、やらないといけない事に一日追われて、気づいたら、自分の受け持ちの患者さんと全然今日話をしていなかった、ということがありました。ここだと自分のペースで患者さんと接する事ができますし、時間が比較的あります。もちろん今の私の立場がボランティアということで、正職員と違いますから仕事に対する姿勢が必然的にかわってくるのだと思います。まぁ、やることは多いですけど。」 上司であるシスターに、森谷さんの仕事の様子を聞くと「仕事熱心で、優しくて・・・」と冗談めかして次々とほめ言葉が上げられて、シスターをはじめ、他の看護師、患者さん、手伝いに来ている学生達と良い関係が築かれている様子が伝わってきた。 ○なぜ協力隊へ応募したのですか? 「看護師として働き始めて、3年目に入る頃に、自分がやっている看護や、看護観の様なものがちょっと揺らいできていました。うつ病の患者さんが増えてくる中で、病気自体が環境に大きく左右されることを実感しました。仕事中心でいつも時間に追われている日本の生活・国民性みたいなものにちょっと疑問を持ち始めました。」 看護のやり方についても、「結構ぎゅうぎゅう詰まっていた感じがあったので、日本だけではなく、他のところも見てみたい、という気持ちが強まりました。」 病院を辞め、ワーキングホリデーを使ってオーストラリアの養護学校と老人ホームで6ヶ月間ボランティアをする。「看護ができればベストだったんですが。(オーストラリアの)ライセンスを持っていないので、医療行為はできませんでしたが、患者さんと接したり、向こうの看護スタッフの動きを見ることができました。」「オーストラリアで、人、社会、環境が(日本と)違うから、病気の構成なども異なっていることを体験しました。」 そして、「医療職としてもうちょっと他のところも見たい」という思いから協力隊への応募を決めた。オーストラリアから帰国後、自治体の中国研修事業で、姉妹都市関係のアモイ市の大学に1年間派遣された後、すぐに、協力隊の秋募集に応募した。「一番強かったのは、他の国の看護を知りたい。」ということ。 「現在は精神科しか経験がないのですが、機会があれば将来的には地域看護にも携わってみたいと思っています。また、国内の他の医療施設、”CENTRO DE SALUD”やスクレの国立病院”San Juan de Dios”も見てみたい。」と考えている。 ○今後の活動について
「最終的にもっと言葉が上手くなれたら、看護師さんたちの業務をもう少し整理できれば、と思っています。業務改善かな。」 日本だとマニュアルがあるので、初めて来た人でもそのマニュアルを読めば病棟の流れや、患者さん毎に必要な処置や、検査の時にどういう準備をしておけばいいというのがわかる。 精神科は、検査、処置はそれ程多くはないが、「例えば入院してきたときに、看護師スタッフによって、対応が違うと、その後引き継いだ看護師が、プラスアルファでやらないといけない仕事が増えてきたり、患者さんも混乱してしまいます。小さな事なんですけど、積み重なると多くの時間をとられ、また患者さんとの信頼関係ができないと治療にも影響してきます。」 業務改善以外にも看護師を中心に、一緒に勉強会ができたら、と考えている。「例えば薬の副作用についてこういうことが考えられるからこういう所は観察していこうとか、皆でそういう情報を共有できる場所を作りたいです。」 現在は、医師の勉強会があり、時間の合うときに看護師も一緒に参加する。また、医師が中心になって、患者の家族を対象に月に1回の勉強会も行っている。しかし看護師内では、会議はあるものの定期的ではなくて、なにか緊急の用事があった時のみである。 「看護師の中でもモチベーションが高く、勉強したいという看護師は結構いると感じます。」勉強会の必要性は高そうだ。 「また最近は、日本語を教えて!という声もでてきているので、日本語会話のクラスという名のもと、日本の文化紹介をしたいと考えています。日本人と一緒に働いているというのはこちらの方にとっては珍しい環境です。私達を通じて、日本のことに興味をもち身近に感じてもらえたらとても嬉しいです。」 (2005.4.20 / MK)
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